

永合由美子(なごうゆみこ) さん
広報[東京大学]
――東大工学部の魅力を発信!
ライオンで約24年、素材研究、商品開発、マーケティングに従事した後、2009年に退社。10年より、東京大学大学院工学系研究科広報室勤務。NPO法人「放課後NPOアフタースクール」でも活動。財団法人生涯学習開発財団認定コーチ、キャリアカウンセラー、消費生活アドバイザー、ファイナンシャルプランナー。2人の社会人の母。東京都出身。
――大学内外に向けて工学部の魅力を発信!
東京大学工学部の広報を担当しています。広報活動は大きく分けて3つあります。ひとつは一般の方に向けたイベントの開催。ひとつはWEBサイトの運営。もうひとつは、研究のプレスリリース活動です。すべては、工学部を知ってもらい、身近に感じ、好きになってもらうための取り組みです。東京大学では、1・2年生は一般教養を学び、3年生から学部を選択します。大学外に向けた広報発信とは別に学内向け広報活動があり、それが学生たちの学部選びのサポートにもなっています。
――小中高校生たちが工学に触れる機会をつくる
一般向けのイベントでは、中高生に向けた工学分野の体験教室などを開催しています。小中高校の授業には「工学」という科目がありません。また、工学系出身の先生も少ないため、若い学生たちには、工学が何なのかを知る機会がほとんどないんですね。そこで私たちが、広く工学の魅力を伝えることで、1人でも多くの若者が工学の世界に触れるきっかけになればと願っています。また、各研究室や先生方、学部としての取り組みを世の中に伝えることも大切な広報活動です。研究や教育活動・対外イベントなどの内容を随時WEBサイトで公表しています。研究には最先端のものも多く、著名な学術雑誌に掲載されたり世界中から注目されたりする場合には、新聞社をはじめメディア各社へプレスリリースを送り、より積極的に広く研究内容を知ってもらえるよう働きかけます。
――家庭用品メーカーで24年勤務
私が母校で広報を担当するようになったのは、2年前からです。その前は約24年間、家庭用品メーカーのライオンで働いていました。大学時代に学んだ化学工学の技術を生かし、研究所で素材・原料開発に10年ほど従事。その後、もっとお客様に近いところで仕事がしたいと思い、希望して洗剤チームへ異動しました。それから8年間、衣料用粉末洗剤からブラシ付き容器に入った部分洗い用洗剤まで、さまざまな洗剤商品にかかわりました。
――部屋干し洗濯物のにおいの原因を明らかに!
一番記憶に残っているのは「部屋干しトップ」という商品です。室内で洗濯物を干した時の、あの嫌なにおいの原因はいったい何なのか、というところから開発が始まりました。しかし、従来のにおいセンサーでは反応が出ず、その原因を突き止めるのにもひと苦労…。他部署から「臭い」と文句を言われながら、研究室や階段にも洗濯物を干してにおいが出るのを待ち、自分たちの鼻でかぎ続けました(笑)。とてもアナログな方法からのスタートでしたね。研究開発にあたって、評価基準がないものにアプローチするのは大変な作業です。評価基準と評価方法を一から作り出し、実効を得るまで、苦労はありましたが、そのかいあって商品はヒット! 社長賞も受賞しました。
――興味はモノからヒトへ
洗剤の研究開発を通じ、日用品を扱うには生活者を知らなければならないことを感じ、徐々に私の興味はモノからヒトへ移っていきました。そして、社内の「生活者行動研究所」というヒトを研究する部署に、さらには商品企画部門に異動し、マーケティング関連の仕事に5年ほど取り組みました。その間に、モノづくりはやりがいのある仕事だけれど、これまでの自分の経験を生かし、ヒトにかかわる仕事をすることも自分にとってすごくハッピーだ!という思いが強くなっていきました。
――40代後半で人生の転機!
40代も後半となり、このまま会社で働き続けるか否か迷った末、48歳で退社。タイミングとしては、10歳年上の夫の定年が数年後に迫っていたので、次のステップへいくならば彼が働いているうちに!と思い動きました。退社後はキャリアカウンセラーの学校に通いながら、教員免許を持っていたので教職の働き口を探したり、新聞記事で見かけたNPO法人(特定非営利活動法人)の活動に参加して子供たちの放課後を充実させるプロジェクトのお手伝いをしたりして過ごしていました。半年ほどした頃、縁あって東京大学工学部で勤務することになり、今に至っています。
――can×will×mustの交点で仕事をする
私の信条は「自分ができることに精一杯挑戦する」。そして、can(できること)×will(やりたいこと)×must(求められること)の交点で、仕事をしたいと思っています。その交点は自分もハッピーに働ける確率が高いはず。自分ができることを考えつつ、やりたいことを見つめ、世の中に役立てることを探す。そうすれば、何歳であっても、どんな環境であっても、道は広がります。それともうひとつ、私は「もったいない」をなくしたいんです。「こんなに素敵な世界があるのに、皆に知らせないなんてもったいない!」と思ってしまうんです。だから今は東京大学工学部という魅力あふれる存在を、もっとたくさんの人に知ってもらいたいと様々なチャレンジをしています。
――ひとつの正解を求めるだけでなく、多様な道を考えられるように
「キャリアレインボー」という言葉があります。例えば、私なら、広報の仕事をする自分、母としての自分、娘としての自分、女性としての自分…。それらレインボーの幅は、人生のタイミングで変化していくものです。必ずしも自分の思い通りの充実を得られないこともありますが、いろんな選択肢を持ち、幅を持って働き、生きていけばいいのではないかと思っています。私たち日本人は、【3+5=□】という数式で勉強してきたので、すぐにひとつの正解を求めがちです。でも【□+○=8】の発想で、皆が一人ひとりの個性を目指して、いろんな道を考えていけたらいいですよね。
新入生が行き交う春の本郷キャンパスで行なわれた今回の取材。研究職からマーケティングという一見すると職域の異なるキャリアの重ね方も、永合さんが語ると、とても自然。それは常にご自身のwillに正直だからかもしれません。取材の終盤、話題の「秋入学」に話がおよびました。「秋までの半年、皆が自分を見つめて、自分の幅を広げる時間になればいいと思うんです。長い人生、あくせくする必要はないですからね」とにっこり。若者には、ぜひ秋までの時間を【□+○=8】のそれぞれの発想で過ごしてほしいですね。
東京大学工学部。HPはこちら。
http://www.t.u-tokyo.ac.jp/
[※記事内の社名・部署名などは掲載時点での名称です。]